■エイトマン■

■大人の魅力「エイトマン」
子供向けで始まったTVアニメに大人の主人公が登場。どこか影のあるキャラクターと本格的なストーリーは、TVアニメが大人に放ったメッセージなのかもしれません。




エイトマンは捜査中に死んだ東八郎(この名前には思わず吹き出してしまいますが)の人格を、谷博士によってスーパーロボットの電子頭脳にコピーされて誕生したものです。ロボットと言うよりもアンドロイドのような存在で、復活後の東は探偵として活躍します。探偵事務所には助手のさち子さんと一郎少年がいました。

エイトマンは当時子供向けだったマンガ・アニメを、大人でも楽しめるようにした画期的な作品です。時期的に見ると、マンガ雑誌への掲載とTVアニメが並行して行われていたようです。マンガは少年マガジンに連載されており、原作は幻魔大戦で有名な平井一正氏、作画は桑田次郎氏が担当しています。アニメとマンガはストーリー展開がやや異なっていたようなので、マンガは桑田氏が独自に展開していたのかもしれません。

エイトマンの魅力はなんといってもその特徴的な作画です。キャラクターが日本人離れしており、東にしてもさち子にしてもいわゆるイケメンでした。しかも桑田氏の作画力はずば抜けて高く、日本のマンガともアメリカンコミックとも違うキャラクターと相まって、独創的な世界を作り上げていました。個人的には子供だったこともあってキャラクターには少々抵抗がありましたが、成長してから大人の目で見ると、作画が非常に魅力的に感じたものです。

作品で印象に残っているのは、変身したエイトマンのベルトのバックルに収められているタバコ型の強化剤です。これは電子頭脳を冷却するためのものでした。エイトマンの電子頭脳は負荷がかかると今のCPUのようにオーバーヒートして熱暴走を起こすため、時々冷やしてやらないといけないわけです。巨大なファンを付けておけば済むような代物ですが、さすがに美的感覚が許さなかったのでしょう。当時はタバコを吸うシーンがニヒルなエイトマンを演出していましたが、禁煙が一般的となった昨今ではちょっと受け入れがたいシーンです。特に外国ではそのままでは放映できないでしょうから、今風のサプリメントスタイルにアレンジされるかもしれません。つまり、ピンチになったら錠剤を飲むというパターンなわけです(まるで何かの中毒患者みたいですけど)。

エイトマンは主題歌も印象的です。マーチ調でたいへんノリが良く、澄んだ伸びのある歌手の歌声と相まって、間違いなくアニメ史上の名曲と言えます。主題歌の歌詞は、当時人気タレントだった前田武彦氏によるもので、後からそれを知った時にはたいへんびっくりしたものです。

当時のアニメはなぜかコマーシャルと切っても切れない縁があるようで、エイトマンも例外ではありません。エイトマンのスポンサーは丸美屋食品で、この作品によってふりかけで一世を風靡しました。手軽な補助栄養食としてのふりかけは、当時急速に拡大しつつあったインスタントラーメンに並ぶインスタント食品の柱でした。子供達はやはりふりかけに入っているエイトマンシールを目当てに、ひたすらふりかけごはんを食べていたのです。(蛇足ですが、ふりかけと言えば、かつおふりかけがネコの好物でしたね)

エイトマンの由来はしごく単純です。警視庁捜査一課は、7人ずつ7つの班をつくっていて、そのいずれにも属さない8番目の刑事という理由から、8番目の男「エイトマン」となったわけです。名前も八郎ということでちょっと出来過ぎた感はありますが、スラリとした西洋人っぽいイケメンにしては、名前が少々ダサイと感じるのは私だけでしょうか。

エイトマンの設定は、マンガとアニメでは少々異なるようです。マンガではどこかの国が谷博士に戦闘用のスーパーロボット(エイトマンのベース)を開発させたと記憶しています。博士の素性はよくわかりませんが、なんと、谷博士もスーパーロボットだったんです。本物の博士はとっくに亡くなっていて、身代わりに作ったのが現・谷博士なのです。エイトマンが戦えなくなった時、谷博士がエイトマンに変身するエピソードもありました。実は谷博士はエイトマンのプロトタイプみたいなものなんですね。驚きです。(と言うことは、博士もエイトマン走法ができるのか?)
一方アニメの設定では、アメリカのCIAが谷博士の協力を得て開発した秘密兵器となっています。しかし、兵器として利用されるのを嫌った博士が、エイトマンと共に日本に逃れてきたようです。

エイトマンは無敵と歌われている割にはピンチに陥る事が多く、普段から自分がロボットであることに悩み続けています。特に探偵事務所のさち子に正体を知られる事には、かなり恐れを抱いていました。さち子が元恋人という噂もありますが、私の知る限りでは事務所に雇われるまでは赤の他人だったはずです。さち子は東探偵にほのかな恋心を抱いていますが、東の方も同様です。しかし、ロボットの身である彼は、思いを胸に秘め表向きはクールにふるまっています。一度、電子頭脳が加熱して街をふらついていた時、エイトマンがさち子の姿になってしまうエピソードがありました。なんとも色っぽい不思議なエイトマンなわけですが、これなどは秘められた本心がはからずも現れて、なかなか興味深いものでした。

エイトマンに登場する女性は、他のマンガやアニメでは見られない独特の雰囲気があったせいか(強いて言えば、勝ち気な感じのお嬢様?)、記憶に残っているストーリーでは、超能力少女の話が印象的です。確か悪夢が具現化して事件を起こすというもので、映画「禁断の惑星」のイド(精神)の怪物のようなものだったと記憶します。実体が無いのでエイトマンも苦戦を強いられました。

苦戦と言えば、エイトマンよりも強力なロボットもいました。その名前は忘れましたが、エイトマンが腕をもがれた相手だったと思います。さすがにこの時ばかりはエイトマンも最後だと思えるような展開でした。エイトマンはマンガの連載を結構読んでいたせいか、TVとごちゃまぜになってしまい、頭の中で記憶が混乱しています。

前にも触れましたが、エイトマンはその独特の走法が有名です。彼はマッハ2.5で走れるそうですが(その割には新幹線といい勝負だったような…)、加速すると腕を振らずに走り、足の動きはあまりに早すぎて見えなくなるという走法です。単にセル画を節約しているだけですが、ここまで極端に省略化すると天晴れとしか言いようが無く、かえって強いインパクトを与える結果となりました。この超スピードを生かして空を飛ぶシーンもあります。実際にはハイジャンプですが、なにせ助走でマッハ2.5ですから、相当高く遠く飛べたのではないかと思います。