■宇宙少年ソラン■

■マスコットキャラが人気の「宇宙少年ソラン」
ソランの相棒チャッピーは、元祖マスコットキャラと言えます。そのかわいい声としぐさで、女の子にも人気のあるアニメでした。




TVアニメの黎明期はSF物が多かったのですが、宇宙少年ソランもその1つでした。本作品は1965年5月の放映開始で制作はエイケンです。同時期に少年マガジンへの連載が開始されていることから、アニメとの共同企画で作られたもののようです。雑誌の執筆は手塚治虫氏のアシスタントから独立した宮腰義勝氏で、絵柄や作風がよく似ていました。アニメの脚本は豊田有恒氏や辻真先氏が担当しており、黎明期の作品には高い才能が集約されていることがわかります。

ストーリーはソランがまだ赤ん坊の頃に、両親と共に宇宙で事故に遭遇したことから始まります。宇宙船が爆発する前にソランの両親は我が子を助けるために、小型のカプセルで宇宙空間に脱出させました。ソランは宇宙を漂流してソラン星に救われたのです。成長したソランはサイボーグ化の手術を受け、まだ見ぬ姉に会いに、はるばる地球へとパートナーのチャッピーを連れてやって来ました。地球で姉を捜しながら悪人と対決します。

ソラン星の重力は地球の15倍と言うことで、それに適応したサイボーグのソランは、地球では驚異的な身体能力を発揮します。ソラン自身には武器らしい武器は無くて、確かベルトのバックルから光線が出るくらいだったと記憶します。そう言えば、主題歌の歌詞の中に「胸に輝く秘密のペンダント」といったフレーズがあるのですが、アニメ版にも雑誌版にもコスチュームにそのようなものは見当たりません。秘密なんだから見えなくても良いのだと、勝手な理屈を付けることもできますが、結局最後まで秘密で終わってしまいました。たぶん企画段階でソランのデザインに変更があり、胸のペンダントが腰のバックルになったのではないかと想像します。それが作詞家に伝わらなかったのか、既に曲が出来上がって変更できなくなかったか、そんなところではないでしょうか。同じような例は他のアニメでも見られるので、この業界も色々と大人の事情があるのでしょう。私自身は覚えていませんでしたが、ペンダント自体は実在しており、生き別れたお姉さんと再会して二人の持つペンダントから、父の作った反陽子爆弾の秘密がわかりました。その後、悪用されないよう二人はソラン星に旅立ったとどこかで紹介されていたようですが、実は最終回でピンチのソランを救うため、ソラン星からやって来た恩人(博士)達に処分を頼み、二人は地球に戻ったと言うのが真相です。最後のエピソードは改めて見ると全般にお粗末な展開で、SF作家らが関わっていた割には残念な結末でした。

ところで、ソランと共に地球にやって来たチャッピーは、当時は目新しいマスコット的なサブキャラで、リスにそっくりの動物でした。人と同じ知能を持ち空を飛べる他、頭には先端に丸い球体の付いた触角のような物が生えていて、テレパシーを使ってソランと会話できます。危険を察知すると尻尾が光る不思議な能力がありました。いつもソランの肩に乗って「ソランくん、ソランくん」と何度も呼んでいるので、その声は今でも印象に残っています。ソランは当時としてはかなり美少年の部類で、なかなか均整の取れた格好良いスタイルをしています。チャッピーもかわいいマスコット的なキャラクターだったので、この作品は男の子だけでなく女の子にも人気がありました。当時のSF作品としては珍しいことだったと思います。

ソランは地球上で大きな力を発揮するわけですが、それはあくまでも一般人と比べての話で、戦闘能力としてはさほど高いわけではありません。むしろヒーローの中では華奢で非力な部類です。しかもほとんど武器を持たないため、戦いでは苦戦の連続です。一度死にかけたこともあって、途中でソラン星から球体の乗り物「エンゼル号」を贈られます。スーパージェッターの流星号のように水中を潜り空も飛べるこの万能マシンは、実は宇宙船でもあります。ユニークなのはその乗降手段で、一種のテレポートを使って移動します。スタートレック風に言えば転送でしょうか。初代のスタートレックが1966年放映開始と言いますから、宇宙少年ソランの方が先なんですね。とにかく大きな戦力を得たことで、ソランの活躍の場は一気に広がります。時々忘れた頃に思い出すお姉さんの捜索にも、大きく役立ったことでしょう。

スポンサーは金や銀のエンジェル(昔はエンゼルと呼んでいた)マークで有名?な森永製菓です。そう、ソランの乗り物の「エンゼル号」と言う名前は、このスポンサーに因んだ名前で、一般公募で選ばれたものなのです。この頃にはお菓子メーカー御三家が全てTVアニメに参戦し、アニメを軸にしたお菓子メーカーの戦国時代はいよいよ熾烈を極めることになりました。

ここからは余談になりますが、当時放映作品の企画において、スパイ事件のようなものがあったようです。本作に登場するチャッピーは手塚氏のアイデアの盗用とも言われ、本作と絡んでナンバー7の企画をW3(ワンダースリー)に変更せざるをえなくなったり、手塚氏がW3の執筆を少年マガジンから少年サンデーに突然変更するといった、なんともドロドロした裏事情がWikiでも紹介されています。昨今ではTV放映をめぐって明らかに大人の事情による操作が行われていますが、子供の夢をぶち壊すこれらの行為は既にこの頃から存在したんですね。知れば知るほど奥が深い業界です。