●AD-X

ストーリー
西暦22XX年、富裕階級の住む超高層都市「エデン」を捨てて、都市最下層で生きるエンジニアの修の元に、1体の壊れたアンドロイド少女が持ち込まれた。少女に魅せられた修は、必要な部品を調達するため再びエデンに向かう。それが恐ろしい計画へのきっかけとなり、やがて悲劇の幕が上がる。

●短編集-2に収録
作品本編32P

 


●ギャラリー

 

 

■タイトルについて
ストーリーの終盤で明らかにしていますが、「AD-X」とは、この物語においてはなんらかの理由、例えば破壊や損傷等によって破棄され、登録を抹消されたアンドロイドを意味しています。超高層都市「エデン」はそれ自体が独立した社会を形成しており、アンドロイドは全てIDナンバーを与えられて登録・管理されています。その中で、ANDROIDの登録ナンバーが不明=XなものがAD-Xと言うわけです。エンジニアの修が手に入れたアンドロイドの少女は、まさにこのAD-Xであり、本編で語られているように、本来なら存在してはならないものなのです。

一方で本タイトルは未来の(西暦)AD-XXXX年をも表しています。具体的には今から200年以上先を想定しているわけです。その時代には現在のロボットの進歩から考えても、ハード的に人間に酷似したアンドロイドが存在することが予想されます。ただし、頭脳が絡むソフトの面で、どこまで人間に迫れるかは定かではありません。未だ意志を発動させる精神の根幹部分が謎だからです。

余談ですが、現在でもAI(人工知能)を搭載して、あたかも人のように応答するロボットがありますが、これは人間側の勝手な思いこみであって、ロボットが意志を発動しているわけではありません。もちろん感情を持たないことは言うまでもありません。彼らは経験値を元に単にプログラムされた特定の規則に従って分析・決定を行い行動しているに過ぎないからです。それでも、過去の膨大な経験を蓄積し、常に周囲の状況を照合しながら緻密な判断を行い、自らの行動を導き出せる能力が備わることで、見かけ上は意志のようなものを持たせることはできると思います。特に分析、判断の段階でアナログ的な曖昧さを加味すれば、個性的な行動パターンも実現できそうです。ただし、こうしたやり方は未知のものへの適応が難しく、予想外の結果を招く原因にもなります。

■進化の果てにあるもの
人間によって創造され、人間に奉仕するために生まれたアンドロイドですが、いつの日にか全ての面で人類を超える時が来るのではないかと思います。なぜなら彼らは極めて長期に渡って活動を続け、膨大な知識や経験を蓄積しつつ、より完璧な存在になるために自らに改良を加えて進化していけるからです。生命の進化の過程で自然発生的に生まれた人類が、今度は自らの知識と能力で人工的に進化の後継者を作り上げたのです。人類が生物としての限界を打破することができず、やがて自滅への道を歩み始めたとしても、アンドロイド達はより進化した「新人類」として、更なる未来を切り開いていくに違いありません。

■そして彼らは何を目指すのか・・・
今はまだわかりません。しかし、思考力を持つことで、自らの存在意義を探求するようになるのではないかと思います。ちょうど人間が自分達は何のために生まれ、何のために生きるかを問い続けるような感じです。その過程で、この世界や宇宙の謎を解明しようともするでしょう。知的好奇心は高度な思考力の証でもあります。集百年、数千年をかけて星の海を渡る者が現れるかもしれません。

一方で、人間社会のように争いが起きる可能性もあります。万能でもある彼らが欲望を持つとは考えにくいのですが、何らかの利害関係を巡って戦うことはあり得ます。中には自らの存在自体を否定し、自身のみならず全てを破壊・消滅させようとする個体が現れるかもしれません。1つ言えることは、いかに彼らが長命だったとしても、同じ事が永遠に繰り返されることは無いでしょう。それが進化の本質でもあるからです。