●光のミュン

ストーリー
「悲しみのエキス」を収集するために、人間界の夜の闇を駆ける魔族の少女ミュン。不治の病の少年、陽一との出会いが彼女の運命を変える。

●短編集-1に収録
作品本編30P

 


●ギャラリー

 

 

■デジタルマンガへの第一歩
「光のミュン」は、マンガ制作ソフトウェアComicStudio(ClipPaintの前身)を使って制作した初のデジタル作品です。パソコンが登場した時、いつかコンピュータでマンガを描ける時代が来ることを確信しましたが、本ソフトの登場でようやくその時が来たことを実感したものです。

ComicStudioはマンガを描く作業のほぼ全てをシミュレートしており、コンピュータの利点を余すことなく発揮して、効率的に作業を進めることができました。豊富なトーンは貼り替えも実に簡単で、とにかく一度この環境で制作を行うと、もう以前のような原稿用紙にペンとインクでの作業には戻れません。更にセリフ等には活字フォントが使用できるため、完成品はそのまま誌面にもできる完全なマンガ原稿となります。個人がデジタルマンガを公開することで、これまで出版社中心であった商業マンガの世界も変わるのではないか、当時そんな期待を抱いたことを思い出します。

初のデジタル作品と言いましたが、実は原版となったのは従来の紙にインクで描いたマンガです。デジタル化の当初の目的は、それまでに描き溜めた作品の総仕上げでした。セリフまでも含めた完全な形での原稿を作るのが主眼だったわけです。ですから、まずは紙の原稿のスキャンに始まり、デジタル化したデータをコンピューター上で編集する作業を進め、デジタルトーンを新たに貼り直しました。同時に手書きのセリフをフォントに置き換えています。元原稿を描いた時点の画力が未熟だったこともあって、その後も何度かの修正を重ね、完成度を高めることに努めました。セリフ等も随時変更して、ようやく自分でも満足できる作品に仕上がったと思っています。因みに短編集-1と短編集-2に収録した作品は、全て同じ要領で制作しています。

■作品について
ミュンは筆者のキャラクターの中でも特にお気に入りの一人です。冒頭に登場する仲間達同様、悪魔のデザインとしては比較的クラシックで「正当派」と言えるものです。魔界の構図は、魔王を頂点として司教らが属する支配階層、ミュンやヨーマ等の一般階層、魔獣や妖獣等の下級階層に分かれています。各階層も細分化されていて、厳格な身分制度社会を構築しているのです。ミュン達はサラリーマンのようにノルマを課せられ(人間界で命の素となる悲しみのエキスを収集すること)、日々の生活を送っています。ヨーマはミュンにとってちょっと意地悪な仲間といった感じです。

「光のミュン」とは別に、いずれ公開予定の長編作品「ミュンの冒険」でも同様のキャラクターが登場します。元々はそちらがルーツで年齢的にも上だったのですが、本作では幼少の陽一とバランスをとるため、少し子供っぽい感じにしました。

作画について留意した点ですが、主人公のミュンが黒い衣装をまとう上に夜のシーンが多く、ともすると黒一色のような絵になってしまうので、衣装につやを与えて背景から浮き上がるようにしています。また、背景をあえて白とするなどして、白と黒のコントラストを強調しています。キャラクターの表情を豊かに見せるために、仕草や行動をややおおげさに描くようにしました。

■光と闇の狭間で苦悩するミュン
ミュンは闇の世界の住人ですが、非情に徹することができずいつも心に葛藤を抱いています。そして自由奔放で自分に正直に生き、最後までそれを貫きます。結局ミュンのような純粋な者には、現実逃避である陽一との仮想的な触れ合いの中にしか、安息の地は無かったのかもしれません。ミュンにとっては悲劇的な最後を迎えるのですが、やがて報われる時が来る、少なくとも結末はその含みを持たせています。そして作品のタイトルにはその願いも込められているのです。