■グレートマジンガー出撃に挑む■
(2020.11.2ー2020.11.13)


ダイナミック企画(C)

前回はマジンガーZの格納庫について考察したが、今回はグレートマジンガーの出撃について考えてみた。今更説明するまでも無いが、グレートマジンガーはマジンガーZの後継番組で、ミケーネ帝国の戦闘獣に破れたマジンガーZに代わって戦う。造ったのは兜甲児(マジンガーZのパイロット)の父、死んだと思われていた剣造だ。彼は将来の戦いに備えて、密かにZをパワーアップしたグレートマジンガーを建造していた。(剣造が建造って、ダジャレじゃないよ)

グレートマジンガー(以下グレートと略称)は全てにおいてマジンガーZ(以下Zと略称)を凌駕する。外観を見てもわかる通り、デザインも洗練されて強化版をアピールしている。新たに搭載されたサンダーブレークやグレートブーメラン(ブレストバーンの熱放射板を外してブーメランにする)、敵を切り裂くマジンガーブレード等に加えて、自力飛行可能なスクランブルダッシュ機能を搭載、改良点は多岐に渡る。

また、頭部の制御ユニットに当たる飛行マシンは、ジェット機のブレーンコンドルとなった。Zでは途中から主推力がジェットエンジンとなって強化されたが、グレートでは更なる高速飛行化が図られている。ただし、ホバーパイルダーやジェットパイルダーのような垂直離着陸機能は無いと推測される(ストーリー内では機能の有無は不明)ことから、小回りが効かない上に、発進の際はカタパルトや滑走路が必要と思われる。スピードと機動性は相反する要素なだけに、どちらを優先するかは難しいところだ。単独での戦闘を重視するなら、やはりスピードを優先した方が有利な展開になるだろう。

グレートが自力飛行能力を獲得したことで、格納庫兼発進口は全く異なるものとなった。なんと、格納庫は海中にあり、発進の際は海底からグレートを打ち出すと言う離れ業を行う。しかも、空中から降下してくるブレーンコンドルと、寸分たがわぬタイミングで合体しなければならない。失敗したら最後、グレートは海の藻屑に、ブレーンコンドルも大破して墜落だ。とても人間業では不可能と思われるような、危険かつ高難易度の合体である。もっとも、ここはアニメと割り切って、スリルとカッコ良さを優先したい。

実用を考えたら荒唐無稽としか言いようが無いが、技術的に可能かどうか考えるのは意味があると思われる。もしかすると何かの建造の際にヒントになるかもしれないし、不可能を可能にするようなテーマを考えるのは好奇心を刺激する。とは言え、個人的には全く不可能だとは思っていない。実際に造るとなれば様々な力学的、物理学的緻密な計算が必要になるが、それは知識と才能に溢れた専門家に任せるとしよう。

余談になるが、マジンガーZは放映途中で視聴率の低下を招き、挽回のために色々なアイデアが検討されたようだ。兜甲児が新しい機体に乗る「ビッグマジンガーZ]や、神竜鉄也とスクランブルナイツが登場する「ゴッドマジンガー」等がそうだ。ところが、ジェットスクランダーやボスボロットの登場で視聴率が回復し、そのままズルズルとZが存続することとなったらしい。確かにZのストーリ自体はあまり出来が良くなくて、個人的には正直なところ面白く無かった。それでもスーパーロボットとして人気は高く、スポンサーや制作サイドの色々な思惑が絡んで、全92話の長寿番組となったわけである。

おかげで後継番組として既にゴーサインが出ていたグレートマジンガーだったが、放映開始が伸び伸びとなってしまい、結局はZが破壊される衝撃的なラストに続く形で実現となった。ストーリー自体はグレートの方が面白いと思うのだが、時代的に破壊の限りを尽くすような描写は控える傾向になり、全体的な活力は失われていったようだ。それと後継の宿命として、どうしても二番煎じ的なイメージは避けられず、主人公も当時としては真面目で暗目なこともあって、Zを超えるような作品にはならなかった。やはりヒット作を生み出すのはなかなか大変なようだ。

 

1.グレートとの合体プロセス

クレートの格納庫自体の詳細はよくわからないが、第1話の発進シーンを見ると科学要塞研究所に隣接する海底に格納庫施設があるようだ。ブレーンコンドルの発進を悟られないように、研究所からパイプを通って陸地(半島?)の地下を巡り、最終的に海岸の崖に放置された難破船の後ろの穴から飛び出し、再び研究所まで戻って来るのだ。その間かなりの距離を移動するわけだが、無駄な時間と労力を費やしてまで、果たして隠密効果がどれくらいあるのかは不明だ。今時、難破船はかえって目立つし、どうせすぐバレるのだから最初から研究所から発進するのがベストではないか、とも思ったりする。もっとも、ロマンの世界にヤボなツッコミはやめておこう。

ブレーンコンドルの接近に伴い、海底格納庫にある発射管からタイミングを見計らってグレートが射出される。海上では渦を巻き、その中心からグレートが空中に飛び出す大胆な出撃シーンだ。推進器らしきものを使っている形跡が無いことから、射出の際の初速のみで慣性飛行を行っているらしい。水中では相当な水の抵抗を受けるため、射出時には大きなエネルギーが必要になるだろう。

 

水中から射出する場合、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)のように高圧ガスで発射管から打ち出す方法が考えられる。最初に渦が発生するのは、恐らく発射管に水が急速に流れ込むことによって起きる現象だろう。水を張った容器の底から水を抜く時に、水面に渦が生じるのと同じ現象だ。グレートの発進シーンを見ると、渦ができてまもなく水中から現れる。どうやら海を割って空洞の中を飛ぶのではなく、水中をそのまま移動するようだ。

問題は射出の際の高圧ガスの威力だが、例えば現在アメリカが保有するSLBMトライデントは全長10メートル程で、重量は約33トンだ。グレートは身長25メートル、重量35トンとされているので、トライデントと重量はほぼ同じである。長さが2.5倍になって発射管の寸法が長くなるものの、発射の際の障害にはさほどならないものと考える。それよりもミサイルに比べて遥かに抵抗が大きな形状の方が問題だ。いずれにせよ、現在の技術でも十分実現可能なレベルではないだろうか。

SLBMはどの程度の水深まで発射できるのか。これは最高レベルの軍事機密で、公開されるはずが無い。隠密性を保つためには水深50メートル以上は必要だとされているので、それより深い所から発射可能なはずだ。攻撃型潜水艦の潜れる最大深度は300〜400メートルと言われているが、水圧を考えると確実に発射できる最大深度はせいぜい100メートル程度ではないだろうか。

グレートの海底格納庫が陸地のすぐ近くであることから、水深は数100メートル以内に収まりそうだ。万一の事故等に備えて、人間が安全に作業できる環境を考えても、あまり深い海底には設置できない。隠密性の観点から水深50メートル以上と考えると、両者の範囲内でおおよその深度が決められる。実用性を重視するならば、格納庫に設置された発射管の上部を水深50メートル程度に設定するのが現実的だ。グレートの身長を考慮すると、格納庫底部は最大で水深100メートル程に収めることができるだろう。

射出の際はできる限り短時間かつ効率的に行わなければならないが、その部分は後で考察する。高圧ガスで発射管から射出されたグレートは、海上に向かって一直線に進んで行く。SLBMと違って人型のグレートは水の抵抗が大きいため、できる限り水の抵抗を小さくする対策が必要だ。SLBMの発射では、高圧ガスを水中に噴射することで泡の膜(空気層)を作り、ミサイルの前方の抵抗を減らす工夫がされている。同じ原理でグレート射出直前に高圧ガスを噴出すれば、やはり水の抵抗を減らす効果があるはずだ。

水中から海上に飛び出したグレートは、第1話のシーンから推定すると、優に200メートル以上の高度まで上昇しているように見える。さすがにその高さまで安定飛行は困難だと思えるので、その半分の100メートル程度の高度を目指すことにする。グレートの重量や到達高度、水や空気の抵抗等から初速をどの程度にすれば良いかを算出できるはずだ。また、それを実現するための発射装置の能力も決まる。なるべく効率的に射出プロセスを進め、低コスト化するためのアイデアを追って考えてみる。

空中を一直線に飛行するグレートは、重力によって自然に減速する。自由落下に入る直前の静止した時に合体するのが理想だが、ブレーンコンドルの接近速度を微調整することで、多少誤差があっても合体は可能なはずだ。当然、ブレーンコンドルの機首には精密な推力制御可能な逆噴射装置を備えていなければならない。それでもコンマ何秒と言う精度が要求されるだろう。「ファイヤー・オン」の掛け声で始まる合体プロセスで、特に重要なのが両者の接近に伴う相対速度だ。もしも許容範囲を超えた速度で衝突したら、衝撃でブレーンコンドルとグレート頭部が破壊される恐れがあるからだ。いかに訓練しても人間技では不可能なため、合体の詳細プロセスはコンピューターが担うことになる。

逆に言えば、グレートの頭上までブレーンコンドルを接近させれば、後はコンピューターが自動で制御してくれるため、エキスパートで無くても合体は可能なのである。精密誘導には電波とレーザーを使い、電波によってブレーンコンドルをグレート頭部の軸線上に誘導した上で、レーザーを使って距離や角度、速度等を微調整しながら接近して合体を果たす。やり直しはできないため失敗は許されない。わずか数秒の時間しか無い上に、グレート側は慣性飛行しているだけなので、ブレーンコンドルには高精度な飛行制御技術が要求される。極めて高度な技術ではあるが、現在のミサイル誘導技術を応用すれば不可能では無いだろう。

 

<格納庫の全貌>

最初にお断りしておくが、これは独自に考えたアイデアで、作品中のシーン等から正確に再現したものでは無い。作者の意図と異なる点があるかもしれないことをご了承頂きたい。この図を元に各部を説明しよう。


  

2.格納庫と射出装置

海底に格納庫を設置する場合、一番問題になるのは水圧だ。海上(標高0メートル)の気圧は1気圧なので、前述したように最大深度が水深100メートルとして、水圧は10気圧(大気を含めれば11気圧)になる。職員が地上と同じ活動を行うために1気圧を維持した場合、壁はどの程度の圧力に耐える必要があるだろうか。1気圧では1平方メートル当たり10トンの圧力がかかる。施設外部の水圧と内部気圧との差は10気圧だ。つまりは1平方メートル当たり100トン以上の圧力に耐える構造物であれば良い。コンクリートの強度が同3000トン位あるようなので、建造することは十分可能だ。施設内部は空洞に近いので、建物としての強度を保つのは別問題だが、少なくとも現在ある技術や材料で施設を造ることは可能なのである。

では、グレートを射出するための発射管はどうだろうか。高圧ガスで打ち出すために、材質は金属製が適すると思われる。潜水艦の発射管と違って重量の制限は特に無いため、安価で加工が容易な鉄やステンレスが採用される可能性が高い。強度を高めて海水による腐食を防止するため、炭素繊維やガラス繊維で外壁を覆う対策も考えられる。もちろん敵の攻撃にも耐える必要があり、通常の建造物よりも遥かに頑丈でなければならない。

グレートの身長を考えれば、発射管の長さは最低でも30メートル以上になる。格納庫内から発射管にグレートを装填するため、発射管本体は格納庫の近くに設置されるだろう。格納庫にはグレートのメンテナンス設備も必要なので、全体スペースはかなり大きなものになる。水中の建築物は高い水圧に効率良く適応させるため、ドーム型かカマボコ型の形状が採用されるはずだ。グレートの格納庫はさほど深くは無いので、カマボコ型でも十分だろう。

下図は格納庫を上から見た図だ。格納庫内ではブレーンコンドルが無い場合も考慮して、移動には専用のトレーラーを使う。ICBMの自走式発射トレーラーのようにグレートを寝せて移動し、横倒しのままか立ててメンテナンスを受ける。また、射出の際には発射管の中まで運んでグレートを立たせる。発射の際に発射管は大きな圧力がかかるため、発射管への出入り口は極めて頑丈で気密性の高いハッチが要求される。発射管の詳細は次項で考えることにしよう。

 

連絡通路によって格納庫は研究所と結ばれている。所員の往来に使うものだが、通路をグレートを運ぶトレーラーが通れるサイズで造れば、研究所に運んでメンテナンスや研究等もできるし、いざと言う時にグレートの退避にも使えるため、コストの許す範囲で検討の余地があるだろう。

海中で格納庫施設を建設するのは大変なので、ブロック化した上で陸上で建造して海に沈める方法を採用する。海底にはあらかじめ格納施設全体を安定させるような基礎を用意しておく。大量のアンカーを海底に打ち込んでベースとするわけだ。沖縄の辺野古滑走路の下地と同じようなものと考えればわかりやすいだろう。ただし、水深100メートルもの地盤に更に数十メートルの深さまでアンカーを打ち込むのは、現状では非常に困難な作業らしい。そもそも実現能力を備えた作業船が無いため、まずは船を建造するところから始めなくてはならない。不可能では無いにしても、準備段階で既にハードルはかなり高いのだ。

更に海底に沈めた格納庫ブロックを組み上げるために、高水圧下で作業する必要がある。小型の潜水艇を使ったり、潜水服で人が潜ったりして行うわけだが、完成に至るまでにはかなりの歳月が必要になるだろう。このような施設は世界的にも存在しないため、実際に作るとなれば様々な課題に直面することになる。海底に居住する実験等は1960〜70年代に盛んに行われたようだが、商業的な魅力に乏しかったのか、その後下火になって現代に至る。施設が作られたとしてもごく浅い海中で、小規模なものに限られるようだ。

最近になって、海底熱水鉱床やメタンハイドレート等が注目されており、採掘のための計画も進んでいる。恐らく海底居住区や作業施設の研究も活発化するだろうから、今後は水中における建設技術や建築資材の開発等も急速に進むことだろう。グレートの海底格納庫のような施設は、いずれ現実のものとなるのである。

格納庫施設の中で、最も重要で難易度の高いのがグレートの射出装置だ。基本的にはSLBMの発射管の応用になる。グレートを変則的な形状をしたミサイルに見立てればわかりやすいだろう。実体は火薬の代わりに高圧ガスを使って砲弾を撃ち出すようなものだ。具体的な方法として、発射管のシリンダー内にセットしたグレートを、下からピストン状のもので瞬時に押し上げる方法を採用する。SLBMのように発射管内にすっぽりと収まる形状では無いので、直接高圧ガスで発射できないからだ。

高圧ガスを発生させるにはどうするか。不活性ガスや高圧の水蒸気をシリンダーに送り込む方法が一般的だが、水素と酸素の爆発的なエネルギーで圧力を得る方法も考えられる。合体プロセスは温度や湿度、気象等の影響を受けるため、射出の圧力を状況に応じて制御する必要がある。慣性飛行中のグレートをコントロールできない以上、ミサイルのように放出すればそれで射出完了と言う単純なものでは無いのだ。

なお、立った状態のグレートは不安定なため、加速するまでは何らかの方法で体を固定しなければならないと思う。例えば、足の裏を電磁力でピストンに結合しておき、放出段階で磁力を切って引き離す方法だ。Zの格納庫の場合も、立ったままリフトアップさせるために同様の仕組みが必要だ。もしも移動の際の振動や衝撃でひっくり返ったら、出撃どころでは無くなってしまう。

 


3.発射管の原理と構造

グレートを射出する前には水面に渦が現れる。これは水が海底で急速に抜かれたことを意味する。発射管を開いた時に水が流れ込む状況も考えられるが、渦ができるほどの水流になるとも思えず、発射管内部の空気が先に放出されることから可能性は低い。

そこで考えたのが、発射管の底にプールを設置して大量の海水を一気に引き込む方法だ。更に、水圧を利用してグレートの発射管をリフトアップする。そうすることで海面に近い位置から射出可能となり、より高い高度までグレートを飛ばすことができるのだ。発射管の全体像を下図に示す。上から見ると同心円状に各部が配置されていて、発射管は筒状のランチャーの中に収められ、垂直移動できるようになっている。通常はプールは空になっていて、内部は空気で満たされている。上部には海水を引き込む給水弁があり、グレート発進の際は弁を開いて水を一気に流し込めば良い。内部の空気が圧縮されて中央に集まることで、発射管は上に押し上げられて加速する。十分な圧力を得るために、加圧ポンプで水を強制注入する方法も考えられる。なお、発進完了後にはプールの水をポンプで排水して、再び元の空の状態に戻す。

ランチャーは陸地と格納庫の双方に連絡通路でつながっており、グレートを乗せたトレーラーが往来できるようになっている。そのため、どちらからでも発射態勢に移行することが可能だ。トレーラーの荷台を垂直にしてグレートを立たせるため、ランチャーの両サイド付近の通路を高くしてある。

ランチャーと発射管は下図のような構造だ。ランチャーは基礎部分に固定されていて、上下に移動可能な発射管が入っている。特長的なのは、発射管自体がシリンダー構造をしており、低部にグレートを乗せたピストンがあることだ。ピストンの下は発射管の底とその上にある遮蔽板の二重構造で、遮蔽板に固定された高圧ガスタンクが入っている。これが射出時の爆発的な圧力を生み出す要となる。

 

グレート射出の際のプロセスを示したのが下図だ。発射管が射出位置まで上昇したタイミングで、高圧ガスを遮蔽板とピストンとの間に一気に放出する。ガスは発射の度に外部に放出されるため、待機状態で高圧ガスタンクには基礎部分からパイプを通じてガスが充填されるようになっている。パイプは発射管が上昇する際に分離され、発射管は完全なフリー状態になって上昇することになる。

 

放出された高圧ガスによって、ピストンはグレートごと一気に加速・上昇して射出口に迫る。そこでピストンの射出ガス放出弁を開いて圧力を上に逃がし、ピストンを減速しつつ射出口を開く。グレートは最大加速状態でピストンを離れ、そのまま海中へと射出されるのである。同時にシリンダー内のガスも放出されるため、気泡が水中を進むグレートと水の間の抵抗を減らす役割を果たす。

海中に出たグレートの足元では、海水がシリンダー上部に流れ込んでピストンは水圧によるブレーキがかかる。ピストン自体は発射管上部で止める必要があるため、ピストン用のブレーキが別に必要になるかもしれない。グレートはそのまま海上に向かって上昇を続け、SLBMのように空中に飛び出した後、慣性によってブレーンコンドルとの合体高度にまで達する。

グレートの質量を基にして、設定高度でグレートが静止すると仮定すれば、射出の際の初速度と必要なエネルギーが算出できるだろう。こうして考えてみると、不可能に思われたグレートの射出システムも、案外現在の技術の延長上で実現できるのではないかと思える。ただし、グレートの背中から翼を出して飛ぶ(飛行するための強度を保ちつつ、折りたたんで背中に収納できる程のコンパクトなものにする)スクランブルダッシュ機能だけは、現在の技術レベルでは到底不可能だ。しかし、翼の収納は無理だとしても、強力なジェットまたはロケット推進器を搭載すれば、将来的に飛行も含めて実現の可能性は高いと考えている。

例えば世界最大の旅客機、エアバスA380が全長73メートルで重量約280トンであることを考えれば、グレートのサイズや重量は大したことは無い。飛行機のように翼の揚力は得られないとしても、ドローンのような形で推力を得れば飛行自体は可能だ。その方が現実味を帯びてはいるが、グレートのデザインが大幅に変わってしまうため、すんなりと採用するわけにはいかない。さて、デザインと折り合いが付くような技術は果たして生み出せるだろうか。いずれ考えてみたいテーマである。

 

 

 

 

4.ブレーンコンドルとの合体

発進プロセスで述べたように、最後の段階ではブレーンコンドルとの合体が実行される。ブレーンコンドルはほぼジェット機のため、高速で飛行できる反面、小回りが利かず低速での安定飛行も難しい。垂直離着陸機能の有無は定かではないが、仮に静止可能な推進器を備えていたとしても、ジェット燃料の消費が激しくて短時間しか維持できない。すなわち一番技術的にも難しいのは、超低速でグレートと合体する時だと言える。

ブレーンコンドルの操縦自体はジェット戦闘機と同じようなもので、特別困難と言うわけでは無い。合体の際はグレートの発進口上空まで飛行すれば良く、後は合体プロセスをコンピュータが自動で行ってくれる。現在ではGPS等を利用した自働航行も実現されているので、最初から自動操縦で発進口上空まで誘導することも可能だ。既存の技術でも、発進から合体までの全てのプロセスを自動化できるのだ。

ブレーンコンドルが合体地点に到達したと判定されると、格納庫ではグレートの射出プロセスに入る。行程は全て自動で行われ、ブレーンコンドルとの制御がシンクロした状態に保たれる。発射管から射出されたグレートは、いつでも合体可能な状態で海上から打ち上げられるのである。

グレートへの合体プロセスの最初の段階は、電波による誘導で行われる。トリガーとなるのは「ファイヤー・オン」の掛け声だ。指令のタイミングはグレートが海上に現れる時点で、ブレーンコンドルのコンソールに表示される。その上で、合体するかしないかをパイロットが判断するわけだ。ストーリ内でも合体を阻止される場面があるので、危険だとパイロットが判断すれば中止も選択肢だ。他にも何らかの不具合によって、合体が困難になる可能性も無いとは言えない。合体不可能となった場合、グレートは海に落下して水没してしまう。それでは困るので、リカバリ方法についても追って考えるとしよう。

合体プロセスに戻ると、電波誘導によってグレートの直上に誘導されたブレーンコンドルは、方向を変えて垂直降下に入る。ここからはレーザーによる精密誘導の開始だ。慣性飛行するグレートは徐々に速度が落ち、垂直降下するブレーンコンドルは逆噴射をかけつつ、速度や位置を微調整して接近する。グレートが静止またはそれに近い状態になったタイミングで、ブレーンコンドルも微速接近状態になって両者は合体を果たすのである。この間も敵の攻撃は待ってはくれないので、最短時間で合体を完了しなければならない。素早く精密な制御が必要になるが、現在でもICBMの迎撃ミサイルはピンポイントで撃墜する精度を誇る(と言われている)ので、技術的には不可能では無いだろう。

合体完了時点において、既にグレートは自由落下状態に入っているだろうから、海面に激突する前に速やかにスクランブルダッシュをかけて自力飛行を行わなければならない。猶予はわずか数秒だろう。これはまた別の技術的な課題なので、今回のテーマでは扱わない。

5.グレートの回収策と総括

私の知る限り、作品内ではグレートの回収シーンは無い。帰還した後でどうやって海底格納庫に戻すのだろうか。それには2つの方法が考えられる。1つは近くに陸地があるので、そこに着陸して格納庫へと地下を移動する方法だ。格納庫の全貌で示した図を見て欲しい。図の左部分が陸地の崖で、その中にグレートを乗せるエレベータを設置する。リフトの上部は周囲の風景に似せて擬装されているため、上空からは判別できない。グレートはGPSと電波誘導を使って、確実にそこに着地することができる。通常は着地後にブレーンコンドルをグレートから分離し、帰還地点(科学要塞研究所)へと戻って行く。直接戻ると発進地がバレてしまうので、発進ルートを逆にたどるか別の地点を用意するのか、計画を更に詰める必要がある。

リフトに着地したグレートは、立ったまま海底格納庫の深度まで降下する。この時もグレートを安定させるための対策が必要だろう。前述したような電磁力を使うのも1つの方法だ。降下後は横に掘られた通路を通って格納庫(または発射管)まで移動する。ブレーンコンドルと合体したまま、グレートが歩いて移動するのが最も簡単だが、立って歩くとなれば、陸地では高さ30メートル近い大穴が必要になるし、海中では大きな通路を造らなければならない。距離が離れるほど工事が大掛かりになり、膨大なコストがかかってしまう。Zでも述べたように穴を掘るだけでも相当なコストがかかるため、それよりもグレートを寝かせてトレーラーで運ぶ方が、小さな通路で済んでコストダウンにもなるはずだ。グレート自体も戦闘で傷ついて歩行困難な可能性もあり、他に移動手段があった方が安心だ。列車のような台車も考えられるが、破壊される可能性も考慮して自走式の方が良いだろう。

陸地にある帰還用エレベーターは、いざと言う時のグレートの退避にも使えるし、万一発射管が使えない場合に、陸地から出動することもできる利点がある。帰還の度に使うために敵に察知される可能性があるが、それは発射管についても同じなので、問題点として提起するにとどめる。同じようなエレベーターを複数個所用意できれば、敵をかく乱することができて良いかもしれない。

もう1つの方法は、グレートの射出用ピストンを海上近くにまでジャッキで押し上げ、海でそのまま回収する方法である。パイロットが位置を目視できなくても、着水地点へはエレベーターの場合と同様に誘導可能だ。最終的に頭部さえ海上に出ていればブレーンコンドルの分離もできるので、格納庫との高低差も考慮して位置を決めれば良いだろう。合体したまま回収するのであれば、直接グレートを発進口まで水中を移動させれば良い。グレートを立ったままピストンに乗せれば、発進とは逆のプロセスで回収できる。

格納庫内にブレーンコンドルのメンテナンス設備も併設すれば、グレート共々修理や整備が出来て何かと便利なはずだ。メンテナンスを終えたブレーンコンドルは、研究所の発進口まで小型トレーラーやリフトを使って運ばれ、スクランブルに備えて待機状態となる。

話を戻すが、グレートをピストン上まで運ぶには、グレート自身が持つ水中移動機構を補助的に使用する。空中から降下したグレートが水中に入った時、足の裏にある推進装置によって減速し、ピストンの上にうまく着地するようにするのだ。推進装置はかなり強力なもので、水中を自在に航行する能力がある。この機能を使えば、グレートを立ったままで海に浮かべることもできるはずだ。すなわち、頭部を水上に出した形で立ち泳ぎのような状態にするのである。

これは、グレートとブレーンコンドルが合体に失敗した時のリカバリにも使える。海に落下したグレートをそのような状態にもっていけば、空中での合体と同じように海上での合体も可能になるからだ。戦闘にはグレートとの合体が不可欠なので、合体リカバリのシステムは絶対に必要だ。海中には発射管や格納庫があるため、グレートが激突しないような対策も必要かもしれない。考えることは山ほどあるが、1つ1つ問題を解決していくことで技術は進歩する。これまでの説明はあくまでも机上でのアイデアなので、実際うまくいくかどうかはわからないが、少なくとも1つの指針を示せたのではないかと思う。

いかがだったろうか。何となく実現しそうに思えたなら、今回の企画は大成功である。アニメの荒唐無稽なアイデアを実現すべく、なるべく既存の技術を中心に考えてみたわけだが、正直なところ私自身も最初は不可能だと考えていた。何しろロボットを海中から打ち出すなどと、普通なら考えもしないことだ。1つには無駄で非合理的だとまずは考えてしまうからだろう。特に理工系の人間は、つい常識に囚われてしまう傾向が強い。

少々乱暴な区切りだが、かつてのマンガ家と言えば、恐らく文科系の人間が中心だったろう。例えSFを描いたとしても、発想は理工系の人間とは違う。SFが好きだから描くのは同じだとしても、着想に至るプロセスは根本的に違うのだ。特に昔のマンガを見ると、その思いは益々顕著になる。技術的に有り得ないようなメカやシチュエーションが実に多いのだ。恐らく科学的な原理、技術を深く知らないことが幸いしていると個人的には考えている。つまり、発想の根源に制約が無くて、とにかく自由奔放なのだ。

最近のマンガやアニメで物足りなさを感じることがあるのは、リアルさを追求するあまりに自由な発想が抑制されている点だ。いかにもありえそうな状況を作る為に、発想自体が制限されてしまうのである。それは見る側の人間にも責任がある。誰もが高等教育を受け、様々な知識に触れられることで、より高度でリアルなものを求めるようになってきた。それがインテリジェンスの証であるかのようにだ。社会自体が高度化して、更に拍車をかけているようにも見える。逆に言えば、あまりに荒唐無稽なものは幼稚なものとレッテルを貼り、嗜好からも切り捨ててしまうのである。

私自身もそのような毒気に侵されて、昔のようにはなかなか発想できなくなってしまった。反省すべき点である。だから作品制作に当たって、まずはありえないような状況を想定してみたい。理論的な補強はあくまでも補助的なものだ。大多数の読者は、面倒な説明や背景など望まない。小難しいことなど本来はさほど興味が無く、直感的に面白いか面白く無いかを判断するのである。フィクションなのだからそれで良いと、割り切ることが一方では必要なのだ。

ただし、マニア向けに徹して、本格的に理論武装した作品を作るのは有りだ。しかし、そのためには膨大な知識と論理的で高度な思考が不可欠で、中途半端な才能ではとても支持は得られない。タイムパラドックスのように矛盾を回避できない課題等も多々有り、正攻法で立ち向かうのは極めて困難だ。商業作品の中にも、リアルさにこだわった挙句、最後は展開に行き詰ってファンタジーに逃げ込んだ例も散見されるので、必要以上に理屈を重視するのもどうかと思う。

ところで、理論的な裏付けを難しく考えなくても済む方法が1つだけある。最初にこの世界ではこういう原理があるのだと明示してしまうのだ。魔法や魔術等の類は最もわかりやすい例だ。そういった類とは異なるものとして、独創的なアイデアによって実現した作品が「ゲッターロボ」である。この作品に登場するメカ(ゲットマシン)は、まるで粘土細工のように合体して現実には有り得ない変形をする。謎のエネルギー「ゲッター線」と、それを受けて自在に変化する「合成鋼G」によって実現したものと仮定しているのだ。フィクションなので、最初からそう定義してしまえば誰も異を唱えないし、作者としても厳密的な理論を考える必要が無い。実にうまいSFパラドックスの回避策である。