■グレートマジンガー出撃に挑む■

海中で格納庫施設を建設するのは大変なので、ブロック化した上で陸上で建造して海に沈める方法を採用する。海底にはあらかじめ格納施設全体を安定させるような基礎を用意しておく。大量のアンカーを海底に打ち込んでベースとするわけだ。沖縄の辺野古滑走路の下地と同じようなものと考えればわかりやすいだろう。ただし、水深100メートルもの地盤に更に数十メートルの深さまでアンカーを打ち込むのは、現状では非常に困難な作業らしい。そもそも実現能力を備えた作業船が無いため、まずは船を建造するところから始めなくてはならない。不可能では無いにしても、準備段階で既にハードルはかなり高いのだ。

更に海底に沈めた格納庫ブロックを組み上げるために、高水圧下で作業する必要がある。小型の潜水艇を使ったり、潜水服で人が潜ったりして行うわけだが、完成に至るまでにはかなりの歳月が必要になるだろう。このような施設は世界的にも存在しないため、実際に作るとなれば様々な課題に直面することになる。海底に居住する実験等は1960~70年代に盛んに行われたようだが、商業的な魅力に乏しかったのか、その後下火になって現代に至る。施設が作られたとしてもごく浅い海中で、小規模なものに限られるようだ。

最近になって、海底熱水鉱床やメタンハイドレート等が注目されており、採掘のための計画も進んでいる。恐らく海底居住区や作業施設の研究も活発化するだろうから、今後は水中における建設技術や建築資材の開発等も急速に進むことだろう。グレートの海底格納庫のような施設は、いずれ現実のものとなるのである。

格納庫施設の中で、最も重要で難易度の高いのがグレートの射出装置だ。基本的にはSLBMの発射管の応用になる。グレートを変則的な形状をしたミサイルに見立てればわかりやすいだろう。実体は火薬の代わりに高圧ガスを使って砲弾を撃ち出すようなものだ。具体的な方法として、発射管のシリンダー内にセットしたグレートを、下からピストン状のもので瞬時に押し上げる方法を採用する。SLBMのように発射管内にすっぽりと収まる形状では無いので、直接高圧ガスで発射できないからだ。

高圧ガスを発生させるにはどうするか。不活性ガスや高圧の水蒸気をシリンダーに送り込む方法が一般的だが、水素と酸素の爆発的なエネルギーで圧力を得る方法も考えられる。合体プロセスは温度や湿度、気象等の影響を受けるため、射出の圧力を状況に応じて制御する必要がある。慣性飛行中のグレートをコントロールできない以上、ミサイルのように放出すればそれで射出完了と言う単純なものでは無いのだ。

なお、立った状態のグレートは不安定なため、加速するまでは何らかの方法で体を固定しなければならないと思う。例えば、足の裏を電磁力でピストンに結合しておき、放出段階で磁力を切って引き離す方法だ。Zの格納庫の場合も、立ったままリフトアップさせるために同様の仕組みが必要だ。もしも移動の際の振動や衝撃でひっくり返ったら、出撃どころでは無くなってしまう。



3.発射管の原理と構造
グレートを射出する前には水面に渦が現れる。これは水が海底で急速に抜かれたことを意味する。発射管を開いた時に水が流れ込む状況も考えられるが、渦ができるほどの水流になるとも思えず、発射管内部の空気が先に放出されることから可能性は低い。

そこで考えたのが、発射管の底にプールを設置して大量の海水を一気に引き込む方法だ。更に、水圧を利用してグレートの発射管をリフトアップする。そうすることで海面に近い位置から射出可能となり、より高い高度までグレートを飛ばすことができるのだ。発射管の全体像を下図に示す。上から見ると同心円状に各部が配置されていて、発射管は筒状のランチャーの中に収められ、垂直移動できるようになっている。通常はプールは空になっていて、内部は空気で満たされている。上部には海水を引き込む給水弁があり、グレート発進の際は弁を開いて水を一気に流し込めば良い。内部の空気が圧縮されて中央に集まることで、発射管は上に押し上げられて加速する。十分な圧力を得るために、加圧ポンプで水を強制注入する方法も考えられる。なお、発進完了後にはプールの水をポンプで排水して、再び元の空の状態に戻す。

ランチャーは陸地と格納庫の双方に連絡通路でつながっており、グレートを乗せたトレーラーが往来できるようになっている。そのため、どちらからでも発射態勢に移行することが可能だ。トレーラーの荷台を垂直にしてグレートを立たせるため、ランチャーの両サイド付近の通路を高くしてある。