■狼少年ケン■

■オリジナルアニメ「狼少年ケン」
タラコ唇がチャームポイントの色黒の少年、狼に育てられたケンがジャングルの密林を元気に駆け回ります。

●東映が放った意欲作
アトム、鉄人に続き登場したのが「狼少年ケン」です。老舗「東映動画(現東映アニメ)」による同社初のTVアニメーションで、人気のSF作品に対抗する形で、まったく違うジャンルの作品を世に送り出しました。作画の雰囲気は「白蛇伝」や「少年猿飛佐助」「西遊記」といった同社のアニメに相通ずるものがあり、当時の映画からTVへの時代の流れを象徴するような作品となっています。

この作品は、それまでの原作があってのアニメ化ではなく完全オリジナルの作品でした。さすがに映画で手慣れていただけあって、アニメの質は他とは1ランクレベルが上だったように思います。オープニングには色々なシーンが登場してバラエティーに富んでおり、凝った構図やなめらかな動きは、老舗の力をTVでも見せつけた感があります。スタジオジブリの宮崎氏や高畑氏が若い頃に参加していたこともあり、なるほどと思える作品です。

狼少年ケンは1963年11月25日の放映開始ですが、この1963年は初のTVアニメーション「鉄腕アトム」がスタートした他、鉄人28号、エイトマン等のアニメが続々と登場した年で、まさに一気にTVアニメ元年を迎えたといった感じです。ちょうどTVもお茶の間に普及してきて、TVそのものが国民の娯楽に発展していく過程にあった頃です。

資料によると、狼少年ケンはTV放映開始後に、雑誌「ぼくら」でマンガ連載もされたようです。なんとなく見たことがあるような気もするのですが、かなり記憶は曖昧です。TVアニメのストーリー自体もはっきり覚えていないのですが、印象ではジャングルの日常といった感じで、ホームドラマのような感覚が残っています。なにか日常のトラブルが発生し、それをケンが仲間の力を借りて解決するというシンプルなパターンだったと思います。ジャングル大帝が結構重いテーマで描かれていたのと違い、こちらは明るくさわやかなアニメでした。

参考までに、昔インドの奥地で狼少女が保護されたという実話があったようで、それがこの作品が作られたきっかけかもしれません。時代が一致するか定かでは無いんですけど、前にそのような話を聞いたように思います。それはさておき、狼少年ケンのTV放映はほぼ全て見ているはずですが、ケン自身がなぜジャングルで狼に育てられたのか、また、最終回がどうなったかも記憶が無くて、当時まだ子供だったので体系的に覚えていないのが残念です。人間界に戻ったという記憶も無いので、たぶん最終回は劇的なものではなく、明日からも同じ日常が続くといった、そんな終わり方ではなかったかと想像します。

主人公のケンはタラコ唇で有名ですが、あのジャングルはどこが舞台だったかと調べてみると、インドの奥地(ヒマラヤ山脈に近い所)という設定であることがわかりました。ずっとアフリカだと思っていたのですが、そう言われてみるとケンも髪型を見ればわかる通り、アフリカ人という感じではなかったですね。ただ、インドの奥地にあれほどバラエティーに富んだ動物達がいるはずもなく、どう見てもアフリカのサバンナにしか見えないんですけど。

狼少年ケンのオープニングは特番等で度々放送されたため、若い人達でもこの作品を知っている人は多いと思います。サンバのリズムで始まり「ボバンババンボ…」と続くオープニングは独創的です。作曲家の小林亜星氏によるもので、歌は少年少女の合唱スタイルでした。このスタイルはTVアニメの黎明期には特に多かったようです。リズムとテンポの良さで、このオープニングだけは鮮明に記憶しています。

狼少年ケンと言えば、アトムや鉄人同様にスポンサーの話を抜きには語れません。この作品のスポンサーは、当時のお菓子御三家の最後の一画である森永製菓です。他の2社からやや遅れる形でしたが、ココアにシールを入れたのが大ヒットして、シールブームが一種の社会現象にまで発展しました。ブームは瞬く間に他の作品へも飛び火し、色々なお菓子にキャラクターのシールが入っていて、ウチでもそこら中の家具にべたべたとシールを貼りまくっていたことを思い出します。